サラリーマンの皆さま、こんにちは。
いの町漫遊記のなかで、土佐和紙の作り方についてお勉強してきました。
名刺を自分で作って、自分で出荷したい方のために、おさらいしてみます。
妻のポミちゃんが東京へ出張なので、高知県南国市にある高知龍馬空港へ送り届けました。ポミちゃんはラフォーレ原宿で開催される『愛と狂気のマーケット』へと向かったのです。「愛と狂気のマーケット」は、あらゆる才能と出会いを楽しむ[…]
いの町紙の博物館
高知県いの町といえば和紙の町です。
いの町紙の博物館は、製紙工場跡地を利用して建てられているそうです。
明治神宮という国内トップランクの神社に紙を卸していたそうなので、1924年当時は格式の高い工場だったに違いありません。
手すきで10畳くらいある紙って作れたんですね。すごいです。

入場無料の販売コーナー。
いの町内の工房で作られた土佐和紙が売られています。
工房紹介のパネル。
いろいろな方が伝統を引き継いていますね。
新聞と楮(こうぞ)のブレンド和紙。
土佐コウゾとタイコウゾの和紙。
タイも楮を生産しているんですね。
変わり種の和紙。
土佐和紙の作り方
入場料を払って、博物館に入場。撮影の許可も職員の方から頂きました。
私が暮らしている集落も、昔は紙の素材となるコウゾやミツマタを生産していたそうです。
ミツマタに関しては我が家の山にも生えているので、紙すきに挑戦できるかもしれません。
主な素材について
紙は木や草からつくれます。
いろいろな性質があって、生産する際の手間や紙質に違いがでます。
楮(コウゾ)
特徴:栽培が用意で毎年収穫ができる。
繊維の質:太くて長くて強靭
用途:障子紙、美術紙など
ミツマタ
特徴:日本固有の製紙原料
繊維の質:柔軟で細くて光沢がある
用途:紙幣用紙、書道用紙、版画用紙など
麻
特徴:日本で最も古い紙の原料
繊維の質:細くて長い。独特の風合いの紙肌になる。
用途:日本画用紙、書道用紙など
雁皮(ガンピ)
特徴:コウゾ、ミツマタと比べると成長が遅い
繊維の質:細くて短い。粘りがあり光沢のある紙ができる。
用途:写経用紙、謄写版原紙用紙など
歩留まり
いの町紙の博物館でもっとも驚いた展示は紙の歩留まり。
障子紙になるまでに96%も消えるのは、なんともいじらしい。
土佐和紙の製造工程
原料
和紙の主原料は主に3つ。
- コウゾ
- ミツマタ
- ガンピ
これらの樹木の皮(じんぴ部)を利用します。
素材は300kgくらいあれば十分でしょう。
これらの原料と同じくらい大切な原料が”トロロアオイ”です。
植物の根っこに含まれている粘液が、いい仕事をするんですね。
ネリと呼ばれる粘剤として使います。
トロロアオイは花が咲くと粘液が少なくなる特徴があるそうです。
植物の不思議。


蒸す
原料が決まったら、一定の数をまとめて「こしき」をかぶせます。
強火で火を絶やさないように2時間半蒸しましょう。

はぐ
原料を蒸し終わったら原料に冷水をぶっかけます。
表面を急激に冷やすことで木の皮がツルリと剥げやすくなるんですね。
ただし全体が冷めてしまうと剥ぎにくくなるので注意が必要です。
手早く行いましょう。

煮る
煮る前の下準備として、一昼夜水に浸して水溶性物質を取り除きます。
下準備が整ったら原料を窯に入れ、アルカリ性薬品を加えて強火で煮ましょう。
アルカリ性薬品は木灰、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、消石灰などが使えます。
沸騰しはじめたと思ったら、そこからタイマースタート。
煮えムラができないように、上下を返しながら2~4時間煮続けましょう。

水洗い・さらし
原料を煮たら、次は川へ行きましょう。
流水の中にうすく広げて、これまた1昼夜水洗いします。
この作業で繊維以外の物質は流してしまいましょう。
水洗いが終わった素材は流水中にそのまま放置。
ムラができないように時々上下をひっくり返しましょうね。
3~4日すると水や太陽の力で自然と白くなります。
冬でもやっていたと考えると、ぞっとする作業です。
煮る下準備で1日。
煮る作業で1日
水洗いで1日
さらしで4日。
今のところで7日かかっています。
一人1日8000円で雇ったとしたら56,000円の人件費。
蒸す・はぐといった原料加工の経費を含めると、うーーん。
ちり取り(水より・空より)
水にさらした原料にはチリが残っているので、キレイに取りのぞきましょう。
まずは原料を少しづつ水に浮かべて、チリを取ります。
川に沈めていたので砂利などもあるでしょう。
キレイになったら原料をよくしぼって、板の上でチリをとります。
デコボコしていたら筆などがひっかるので品質を決める大切な作業なのでしょう。

たたく
ちりが取れたら、原料をたたいてほぐしましょう。
打解と呼ばれる作業で、打解が上手な人は卍解にまでたどり着けるそうです。
たたき棒で40~60分間打ち続けます。
打てば打つほど次の作業効率が良くなるので頑張りましょう。
規則的な打ち方をしないと繊維のほぐれ方にムラができて品質が下がるので注意が必要です。

こぶり
たたきの作業が終わったら紙質を決定する重要な作業に入ります。
叩いて叩きまくった原料を水の中でかき混ぜて繊維を分散させるのです。
この作業をこぶりといい、こぶりと行うことを”こぶる”といいます。
こぶりで使う棒の名前は”こぶり棒”
よくこぶると、木のあくが抜けて柔軟な和紙に適した素材がつくれますよ。

紙漉き(ふなづくり)
こぶりの作業が終わったら、やっと紙漉き(かみすき)です。
水をはった容器(すきぶね)に原料を入れて、撹拌機で分散させます。
撹拌機は「ざぶり」と呼ばれる専用の道具を使用しましょう。
ざぶり終わったらトロロアオイでつくった粘剤を投入。
竹竿などを使いながら、十分に混ぜ合わせます。
粘剤の影響で原料が均一に水の中に広がり、トロットロになった状態を「紙料水」といいます。
粘剤がないと原料たちが分散して水の中に沈むので作業が行えません。
紙漉き(抄紙)
紙料水が良い感じに整ったら、テレビでよく見る花形作業、抄紙(しょうし)です!
簀桁(すげた)という道具を使って、繊維の薄い膜をつくるのです。
簀(す)はスダレのような道具で、フィルターの役割をします。
桁(けた)は木枠です。
簀桁にも、すげえたまらんくらいの歴史があるので詳細は割愛します。
原料の繊維をたっぷり含んだ紙料水をくみ上げると水は下に落ちます。
繊維は簀の上に薄い膜となって残ります。
この膜をどんどん厚くしていこうぜ!という作業なのです。
徒弟制の時代。年季奉公・ 丁稚の頃合い。
膜の厚みを均一にできない弟子の顔面には、よく親方の拳の跡があったことでしょう。

脱水
紙漉きが終わった原料。
今となっては木材だった頃の面影はありません。
もはやプルプルの紙です。
水をたっぷり含んだ紙を1枚づつ積み重ねたものを「紙床(しと)」と呼びます。
日本らしい表現というか、いいですね。
このままだとウェッティがすぎるので、しぼって脱水します。
一言で表現しがたい道具を用います。
嘘をついたピノキオの鼻の先に、重たい石をたくさん括り付けたような道具です。
とどのつまりはテコの原理を使って一晩絞ります。
紙床は200枚から300枚のできたて和紙が積み重なっています。
いきなり大きな圧力をかけると、柔らかなシトちゃんは壊れてしまいます。
つぶれてしまったり、やぶけてしまったり、とにもかくにもダメになってしまうのです。
段階的にコンプレスするパワーを上げていきましょう。
現在ではジャッキが使用されています。
乾燥
実用品の紙の特徴は何といっても”乾いていること”です。
乾燥前の紙は「湿紙」といいます。
しっとり紙を干す板にペタッと張り付けて、天日で乾燥させます。
ペタッとキレイに貼り付けるためにはハケを使いましょう。
しめっている湿紙はシワになりやすいので、この作業を失敗するとこれまでの作業が台無しです。
かつては女性の仕事とされていたのですが、重たい干板を1日中持ち運ぶ重労働だったそうで、マネジメントの緩さが伺えます。
源太くん、説教するからこっちきて。
断裁
乾燥が終わった湿紙は乾紙とはいいません。
紙と呼びます。
品質を整えるために1枚づず検品。
規格品として出荷するため、断裁台に乗せて切りそろえます。
切本という治具をあて、体重をかけて包丁でカット。
熟練者が切った切り口は白い紙のように見えるとか。


荷造り
個人的に荷造りまで展示してくれるのは、とてもうれしいです。
産業全体の仕組みを知るのが好きだからです。
原料を運ぶにも、完成した紙を運ぶにもダンプカーなんていうものはありません。
リヤカーで運びましょう。
大きな木材などは、川に浮かべてサーフィンみたいにして運搬していた時代ですから。
完成した紙は、
- 帖(じょう)
- 束(そく)
- 締(しめ)
- 丸(まる)
という単位で管理されています。
一般的には1締単位を ”とも紙”という厚い紙で包みます。
これから問屋に卸しに行くので、自社と商品のデータはキチンと入力しておきましょう。
紙の名前、製造元の印などです。
問屋の仕事
ここからは問屋さんのお仕事。
1締がある程度集まったら、1丸単位を全国各地に出荷しましょう。
まとめ
有料展示スペースで販売していた和紙。
楮100%なのにとても安い。
あんな作業をかいくぐってきて、この値段なのか。
包装紙に使いたいので2枚購入しました。
おばあちゃんがモゾモゾしていたので、「これくださーい。」と言うと、丁寧に包んでくれました。
和紙の束(一束?一帖?)から数枚を引き抜く際に戸惑ってしまい「この束ね方は違う」と小さい声で言いました。
規格品として管理するためには、現場で時間ロスのすくない、スルリと引き抜ける束ね方があるはずです。
あくまで予想ですし、調べていたらキリがないので、ここらへんで学習の時間はおしまいです。
学んでみた感想は、手間がものすごくかかりますね。
工業化がいち早く進んだ理由がわかりした。
おわり。
催し
私がいの町紙の博物館に行った日は催しがやっていたので、催されて3階まで登ってみました。
ミズカさんという方のアート展示をみました。
未晒の楮100%土佐和紙をもってご機嫌です。
次回予告
バーガ森の謎は、わが眼前にあり!