【How To】サラリーマンのための青銅鏡研磨マニュアル

サラリーマンのみなさま、こんにちは。

今日は青銅鏡の磨き方について学んでいきたいと思います。

学校では卑弥呼の時代なので取り上げられる青銅鏡。

「精密な装飾が施されているほうは裏側で、メインじゃないんだよ。」でお馴染みの”青銅”という素材でできた鏡です。

 

鏡というからにはピカピカしていなければダメです。

姿を映すために磨き上げられていて当然です。

昔の人はどのように青銅鏡を磨いていたのでしょうか?

コンパウンドも、耐水紙やすりも、オービタルサンダーも、ランダムオービットサンダーもない時代に、

どのような素材や道具を使って銅鏡を磨いていたのか?について調べたいと思います。

青銅鏡とは?

人物画像鏡 5-6世紀 出土地不明 和歌山・隅田八幡神社所蔵 国宝

青銅鏡を磨く前に、青銅鏡についてお知らせします。

日本において青銅鏡とは、弥生時代に中国大陸からやってきた最先端アイテムの一つです。

青銅という素材が渡来するまでは一般的に石や土、木などをつかって弥生人たちは生活をしていたワケなので、

さぞ貴重な品だったに違いありません。

参考:古代の青銅鏡づくり(夏休み考古学教室:広島市文化財団 文化科学部 文化財課 )

素材としての”青銅”

青銅とは銅と錫(すず)をブレンドした金属です。

東アジアでは”銅+錫”に鉛(なまり)を加えたりもするそうです。

銅・錫・鉛は加工しやすいので、古代からいろいろな分野で利用されていますね。

 

人類が青銅を使いはじめたのは、紀元前 3000 年代のメソポタミアだそうです。

中国では紀元前 1000 年代の殷(いん)の時代から使われはじめたと言われています。

メソポタミア地方から中国まで製法が伝わってきたのか、

古代中国の金属マニアがたまたま鋳造したのか、

それが分かりませんが、銅のとける温度は 1083℃だそうです。

この銅に錫を加えて熱すると、なぜか銅もつられて 875℃で溶けるので加工しやすくなる。

こんな性質を発見した人はスゴイですね。

青銅鏡の磨き方

参考にした『古代の青銅鏡づくり』の(4)つくってみよう -鏡を磨くーにはこうあります。

耐水ペーパーを使って、鏡面を磨きます。

なるほど。

確かに便利ですものね、耐水ペーパー。

でも今は耐水ペーパーがない時代の磨き方を知りたいのでスルーしましょう。

古代技術の再現実験

違う参考資料を見てみましょう。

参考:古代技術の再現実験 その3 古代青銅鏡製作技術/河西敏雄ほか

「モノづくりの原点を探る、生産原論への道」と書いてありますね。

なかなかマニアックで興味深い読み物です。

はじめに

青銅鏡の研究は裏側の紋様ばかりが注目されていて、鏡の本来の機能であるはずの鏡面側の加工に関する検証が進んでいないみたいです。

時の権力者の姿を映し出す鏡、それには各時代の最先端技術が注ぎ込まれていたのではないか?

そんな歴史的クエスチョンの答えを導き出すために、河西敏雄氏さんらは8世紀当時の研磨技術について検討したりもしています。

研磨期間

正倉院文書「東大寺鋳鏡用度文案 」 には、研磨にかけた記録が残っているみたいです。

青銅鏡を4個つくるのに工数124人日。

そのうち研磨の工程が56人日。

青銅鏡を4個つくるうちの約半分の作業が研磨です。

まずは青銅鏡を準備します。

お手元に青銅鏡がない方は、鋳造してください。

直径は30.3cm、厚さは1.5cmのものがいいでしょう。

鋳造に関しては古代の青銅鏡づくりをご参考ください。

合成比率

〇銅8:錫1 固い

〇銅2:錫1 鏡面仕上げがラクチン

レッツ!研磨!

青銅鏡がそろったら、

①まずは砥石の欠片で磨きます。

番手は#150くらいのものが妥当でしょう。

②さまざまな微細砥粒で磨きます。

古文書によると、さまざまな微細砥粒とは”鐡精”を指すそうです。

鍛冶屋さんの金床周辺の酸化鉄を石臼で細かくにして、フルイにかけたものですね。

400番~1500番のやすりと同じ機能が果たせるマテリアルなのでしょう。

海岸にある砂なんかも使えそうです。

砥石の粉「ナニワ金剛砂」なども現代手に入るモノの中では良いでしょう

③とにかく磨く。

とにかく磨きましょう。

布の種類は3種類。

布は3種類準備しましょう。

麻布、真綿布、絹織物です。

麻布は荒い布。

絹はなめらかな布。

真綿布は中間くらいでしょうか。

この中では絹がなかなか手に入らないと思います。

そういった方はリサイクルショップのネクタイコーナーに行きましょう。

礼服用のシルクネクタイが投げ売りされているかもしれません。

美しく磨き上げるためにはゴマ油が必須。

水で研磨しても問題ないですが、より良い仕上がり、さらに上の美しさを目指すならゴマ油は欠かせません。

ゴマ油の使い方

①コンパウンドが作れる。

ゴマ油と細かい砂(Cr2O3砥粒など)と水、それに石灰を加えるとペースト状の研磨剤が出来上がります。

②布の耐久性を上げる。

布類に染み込ませることで、耐久性を上げることができます。

和紙などの紙類の耐久性も上げることが可能。

研磨剤のブレンドレシピ

3種類の素材を等しい量で混ぜ合わせます。

①酸化鉄赤(弁柄)

1.鉄鉱石を砕く。
2.硫黄分を除く。
3.不純物を沈殿させ、緑礬(りょくばん)という結晶を作る。
4.朴(ホウノキ)の葉に緑礬を盛る。
5.松の薪で2日間、700度で焼き続ける。
6.水洗いして石臼で粉にする。
7.これを3度繰り返す。
8.粉の中の酸を水に溶け出させる。
9.弁柄の成分が沈殿。
10.上澄みを捨て、水を入れる。
11.これを10回から100回繰り返す。
12.板に塗り延ばし、天日干しする。

ー弁柄を作る工程|wikipedia 弁柄

磁鉄鉱(砂鉄)

③土

まとめ

材料さえそろえば、あとはひたすら磨くだけ。

といった感じでしょうか?

サラリーマンのみなさま、頑張ってください。

実際にやってみなければ分かりませんが、

資料を見るかぎり近所に鍛冶屋さんか、高純度化学研究所がないと難しそうですね。

土佐打刃物で有名な高知県に住んでいるので、いつの日か鐡精探しに出かけてみることにします。